ご挨拶
高野山蓮華定院 住職  添田 隆昭

 高野山は弘法大師空海によって開かれました。
山の東には奥ノ院と称される広大な墓地が広がっております。
その一番奥は、地下の石室になっていると考えられ、大師はその石窟の中に永い座禅を今も続けておられると信ぜられております。
『ありがたや 高野の山の 岩かげに 大師は いまだおわしますなり』
と詠われてまいりました。
昔から、弘法大師のおられるこの岩屋近くに遺骨、遺髪、遺歯等を埋めておけば、身体はどこで朽ち果てることがあっても、霊魂はこれ等を依り所としていつまでも高野山に留まって、大師に見守られながら死後の永遠の安らぎを得ることができると信じられております。
その目印として建てられた墓碑は三十万基とも五十万基ともいわれ世界最大の墓地として高野山が世界遺産に指定される大きな要因となりました。
 
この奥ノ院の一画に建立されました「昭和殉難者法務死慰霊碑」にはアジア各地に無念の死を遂げられた方々の御尊名が石碑に刻まれております。
亡くなられた方は、自分の名前がここに記されているのを見、自分の名が読み上げられるのを聞いて、遺骨の替りにこの碑を自らの依り所としてこの聖地に留まり、大師の加護を受けることができます。
私共は金剛峯寺常任総代であられる築野政次様より、この碑をお守りするよう依頼を受けております。
ご遺族は老齢の方が増えておられますが、永代にご供養を続けさせて頂くことをお約束申し上げております。
どうぞご安心下さいませ。 
平成十六年四月吉日


 
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