遺 詠  
 
   
椰子茂る南の土と我はなる歩みし道は人ぞ知るらん           
山口 春男
雲わけて咲きかほりてぞ尊けれ故郷に咲く梅の姿よ           
由利 敬
身は明日の死刑に就くとは知りつつも祖國の空のなほぞ恋しき      
横山 春芳
七度も生れ変りておごる夷を根だやすまでは討たではをかじ       
屋 正義
流れ行く雲を窓辺に眺めつつ奇しき運命を夢かとぞ思ふ         
大田 清一
この罪は国が作りし罪なれど憎めぬ心地するが尊し           
楠元 信夫
軍人(イクサビト)弾雨に散ると想ひしに捕はれて逝く我は悲しき    
西 嘉信
数なるぬさざれ小石の誠をば積み重ねてぞ国は泰けれ          
平山 辰巳
聖戦に敗れし科ぞ己が罪立てし功の裁かるる身は            
知念 清信